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2014年05月03日

喜界島航海記

5月1日、「あ、いまだ!」。その直感は突然のことだった。以前、太古の洞窟の最深部へ到達した時のような「時がきた」感じを受け、いそいそと横断の支度を整えた。午前5時には出港し、おそくても10時にはつきたい。節田から喜界島のスギラビーチ、直線では約25km。徳之島から奄美を考えればその半分以下。仕事で言えば早上がりくらいの距離だ。しかし風、潮も考慮しなければならない。行きは追い風、追潮。帰りは向かい風に横への潮がはやいだろう。そして往復に挑戦だ。なぜ往復なのか、といえば、…漠然とできると感じたからだ。そのへんは長年漕いでいるからわかる感のようなもので、科学的根拠など無い。そんなもので判断してたら危険回避が遅れるしチャンスを逃す。

朝ごはんを夜から仕込み、4時には起きて準備するために早くに床についた。が、まさかの寝坊…。7時の出発となった。では、そんな突如始まった喜界島往復横断記、お楽しみ下さい。

喜界島航海記

水平線上にはっきり喜界島がみえる。寝坊してすっかり夜が明けてしまった。だが、明るくなってからの方がよかったかもしれない。沖縄から渡ってきた時のような海への祈りを思い出す。「海よ、そして生けとし生きる海の生き物よ、この場を通らせていただきます」である。これで勢い良く出るはずが、財布ないのに気づいて〜そのままUターン。向こうで弁当買えないじゃないか…。しかしこれもいいウォーミングアップになった。ちょうど午前7時。さあ、出港だ。

喜界島航海記

節田のリーフ内を進み、喜界島へ標準を合わせる。明るいおかげで海も美しい。節田のリーフをでて1時間ほど漕いだところで、はるか喜界島の方に音もなくクジラのしっぽが見えた。5月になってもまだいるんだな、と驚く。

喜界島航海記

クジラを探しながら進むがそれから全く見ない。漕いで2時間、明らかに潮が流れているのがわかった。カヤックを変に揺さぶる。北西の風を左肩後方から受け、追潮もあってグングン進んでいった。

喜界島航海記

2時間半もすると、もはや奄美沖というより喜界島沖という感じがしてくる。後方の奄美大島のほうが遠くなった。出発して3時間になろうというとき、おそらくはあれだと思われるスギラビーチを目視で確認。いよいよだ。

喜界島航海記

潮が引き、スギラビーチの入口付近はリーフブレイクとなっていた。まいったな、と思ってなんとかかわそうとするが一発波を食らってしまう。しかし無事侵入に成功。実に3時間30分での上陸だった。

喜界島航海記
喜界島航海記

曇りぞら、北風が当たるビーチに誰もいない。自分のパドルから飛んでくる飛沫ですっかりびしょ濡れの服。寒いのでカッパを着込む。そしてビーチの高台から改めて奄美大島を眺める。やがて昼時が迫ったせいか、ちらほら人がやってきて撮影していただいた。

喜界島航海記

スギラビーチで出会った方にスーパーを教えていただき、弁当を買いに。初めてきた喜界島。海を漕いできた島。スーパーの中を歩いていると、奇妙な感覚になってきた。ここは遠い何処かの惑星で、まるで地球人と同じ姿の人間がいる。そして売っているものも地球と同じだ。やや、カツ丼!、これもこの星にあるのか…。なんていう気持ちである。こんな事言っても何言ってんですか、と思うかもしれない。しかしあの小さな細いカヤックで漕いで渡ってきたのがそれだけ感慨ひとしおだったのだろう。どこか遠くの惑星に来てしまったような気がしたのだ。

喜界島航海記
喜界島航海記
北風をよけて大きな石灰岩の下、
惑星喜界島のカツ丼を食す。嬉しい!


喜界島航海記

さあ、今度は奄美へと帰ろうかというところで、スタンドアップパドルボードを楽しみに来た女性が。仲良くなり、またまた撮影していただいた。短かったが不思議な感覚につつまれた喜界島での時間だった。

喜界島航海記
しっかりとナビゲーションをしておく。

喜界島航海記

午前11時45分、惑星喜界島を飛び立つ宇宙船シーカヤック。目指すは奄美大島! ビーチをリーフアウトするやいなや波乗りをするイルカが目の前に出現!その巨体に驚く。

帰り道は一転向かい風。弱いとはいえ確実にスピードは遅くなる。おまけに下げ潮が北方から南方へ向けてこの時最強の強さで流れていた。初めて喜界島方面から奄美大島をながめるので、水平線という低い位置からは空港がどこかわからない。海図をみて、だいたいの山の高さや方角を目印に進んでいった。用安の岬、小湊の岬、市崎などがようやくうっすら分かり始める。そして小高い山の中腹に太陽が丘運動公園がよくみえた。皮肉にもその付近での大きな山火事の跡もよい目印になった。

1時間もすると空港も少しだがみえてきた。ちょうど太陽が丘の建物と重なったいた。このままいけば空港の誘導灯付近のリーフをこえて入ることを考えなければならない。漕いで2時間、往路より明らかに前進が遅いような気がする。そしてトイレが我慢できなくなった。不覚にもおしっこカップを忘れていた。沖縄ではこんなことはなかったが、14年のブランクだ。そこで仕方なく空いたお茶のペットボトルで済ませる。淡く黄色の液体がお茶のペットボトルに注がれ、いつぞやのオリオンビールの思い出が蘇る。

漕いで4時間になろうかというとき、足腰が痛くなり、手をとめて休んでいた。いつのまにか空港が右手に見えていた。だいぶ南に流されているようだ。すると大きな音が「ブォーッ!」となる。みると前方30mほどのところ、クジラのブローだ。カヤックでこんな至近距離の遭遇は初めてだった。そしてすぐ後ろについているもう1頭からもブローが上がる。少し背中が小さい。親子だ。ほとんどがこの時期にはアリューシャン列島へ向けて旅立つ。しかし5月でもまだいた。最後の親子かもしれない。静かに漕いでそーっと接近を試みる。だが距離にして15mくらいのところで、大きな尻尾をあげ、潜水してしまった。下からカヤックを見上げていたことだろう。クジラの向こうには土浜のホテルティダムーンもよく見えていた。岸から10kmほどのところだろう。

喜界島航海記



喜界島航海記
空港と太陽が丘が重なる方角から来て、
いつのまにか節田のリーフの方に流れていた。


喜界島航海記

節田海岸に上陸したのは16時40分。実に5時間近くかかった帰路だった。向かい風、横方向からの強い潮流、疲れて長めの休憩、そしてクジラに見とれていた…。こんなことが重なったための時間だろう。だが、子供のサッカーの送りに間に合った、よしよし。


午前7時に出て17時前に終わる。ま、1日の定時労働といったところ。しかし疲労困憊。夜はビール飲みながら眠りそうになる。要する時間、島の見え方、潮の感じ、疲労感など、貴重なデータが蓄積できただけでなく、サプライズホエールウォッチングもできた1日。実り多き外洋の旅はこうして幕を閉じたのだった。




















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