2013年01月15日
ある夫婦の物語
龍郷町に移住し、終の棲家を建て、第二の人生を始めたあるご夫婦のお話です。
仕事のストレスで、都会ではもうあまり笑わなかったという旦那さんも、島では笑顔を取り戻し、楽しい夫婦生活を送られていました。あるとき、シーカヤックツアーをはじめて間もない私のところへご夫婦でこられました。そして初めてにして龍郷湾をシーカヤックで渡ることに成功。大感激されていました。そんな移住生活から1年が経とうというある日、お二人を悪夢が襲いました。
旦那さんが龍郷の海で泳いでいて、亡くなられたのです。

龍郷湾のコウトリ浜
<夫を失い絶望の日々>
悪夢のような永遠の別れが突然訪れ、1人残された奥さんの菜々子さん(仮名)。絶望の渕に落とされたのです。島に来て間もない中、集落の人々の支えが救いでした。しかし一人になれば、極限に近い悲しみに襲われ、その苦しみは呼吸が出来ないほどだったそうです。食事も喉をとおらず、おそらくは後を追いたい衝動にもかられたことでしょう。

青々とした西原の海
<静かな海が癒す心>
一時期は実家の東京へ帰ろうかとも思ったという菜々子さん。しかし不思議な想いが沸き上がってきたのです。多くの友人が、「旦那さんが亡くなったところにいて辛くないの?」と訪ねますが答えは違いました。不思議と「夫はこの奄美の自然の中にとけこみ、そこにいる」と感じたといいます。そして島に残って暮らすことを決意。5年の歳月が流れました。
<龍郷湾に秘められた不思議な力>
旦那さんが亡くなった年はさすがに何も手につかなかった菜々子さん。しかし優しい龍郷湾の景観が、ゆっくりとですが心を癒していくのを感じたといいます。深い湾を染める朝日や夕日の美しさ。青々と輝く美しさ。そうした自然に救われたのです。。そして翌年から、私は何度となく菜々子さんをシーカヤックに乗せ、島の美しい海へお連れしました。その笑顔は悲しみを消しきれていないものの、夫の死を乗り越えて懸命に生きることを決意した健気さに満ちていました。もしもこれが都会のマンションだったら、どうなっていたかわからないと後に語ってくれた菜々子さん。龍郷湾の美しい風景は、人を絶望の淵から救う力さえ持っていたのです。菜々子さんにとって龍郷湾のいまの風景は、愛する人と最後の時間を過ごしたかけがえのない場所。いつまでも守り続けていきたい、命より尊い思い出そのものなのです。

龍郷湾を染める美しい夕焼け
トヨタ自動車グループ企業によるマグロの養殖場事業が、この素晴らしい龍郷湾を奪おうとしています。1月14日時点、トヨタ自動車グループ企業によるこの計画に異議を申し立てる6061名の署名が奄美に届いています。みなさまほんとうにありがとうございます。2次締め切りが1月15日でしたが、現在も署名の送付が止まらないため、2月17日まで延期が決定いたしました。地元の我々は諦めません。引き続きみなさまのご支援の程、よろしくお願い致します。。
龍郷湾クロマグロ養殖場問題
Posted by gon at 22:57│Comments(0)